コロナ禍における学会運営を終えて

日本コーチング学会副理事長
青木 和浩

· コーチングの今,コーチング学にのぞむ,コーチング学の体系化

2017年度~2022年度の3期にわたり、理事長を務めてまいりました。この間、会員の皆様をはじめ、前会長の中川 昭先生や理事の先生方のお力添えにより、無事に学会運営を終えることが出来きました。私のエッセイは、他の方々と異なりますが、自身の3期にわたる学会運営を振り返らせていただきます。

 

 私が日本コーチング学会の役職に就いたのは、2015-2016年度でした。図子浩二先生(筑波大学;当時の編集委員長)から、コーチング学研究のさらなる活性化を託され、編集委員長をお引き受けしました。現場に活用できる研究、現場への示唆に富んだ学会誌を目指してきました。次の期に理事長を拝命し、図子先生との約束を果たすべく、「現場と融合するコーチング学研究」の充実を図ってきました。一方、私が務めた6年間の半分以上は新型コロナに翻弄された学会運営でありました。以下、各期でのトピックスをご紹介します。

〇2017-2018年度⇒「コーチング学への招待を発刊」
 学会組織に「コーチング叢書特別委員会」を設置し、名誉会長の朝岡正雄先生、現副会長の青山清英先生をはじめ先生方のご尽力で、長年の念願であった学会編集による「コーチング学への招待」が大修館書店より発刊され、総会の議を経て、正会員へ配布することができました。その後、「球技のコーチング学」の発刊をはじめ、コーチング学の体系化に向けて取り組んでおります。

〇2019-2020年度⇒「社会の情報発信・研究推進委員会の設置」
 2019年12月に初めて報告された新型コロナウィルスは、瞬く間に世界をパンデミックに陥れ、私たちの日常生活も大きく変わりました。その中で「スポーツの価値」「東京オリンピック・パラリンピックの意義」など、スポーツの在り方が様々な視点からとらえられた日々となりました。この期は、「コーチング叢書特別委員会」に加え「社会への情報発信」「研究推進委員会」の新たに2つの特別委員会を設置しました。両委員会では「コーチング学会」がスポーツの世界に提言できる情報発信や研究推進を目指し、このパンデミックな社会の中でも「スポーツの価値」を高めることを進めてまいりました。特に「HWRレポート」への対応では、緊急座談会を実施し、スポーツ指導の場での暴力問題について現状を分析、総括し、それを踏まえて今後コーチング学会が取り組むべき課題を明らかにすることを明言することが出来ました。

〇2021-2022年度⇒「ポストコロナに向けた学会運営」
 新型コロナは、決してネガティブなことばかりではありませんでした。この間に選挙や総会、学会大会、理事会がオンラインというツールでも実施が可能であることが分かりました。オンラインの特性を最大限に活かすために、この期では、学会ホームページの充実を図り、様々なコンテンツを提供することが出来ました。さらに、学会誌への投稿システムをオンライン化することにより、これまで以上に多くの会員の皆様の投稿が簡易的になりました。そして、「コーチング学研究」の編成方針を変更し(コーチング学研究、第35巻、第2号、185~)、「コーチング実践への示唆」や「コーチング学への貢献」の重要性を明確にしました。

〇終わりに
 この6年間で常設委員会の他、特別委員会の中で「コーチング学の体系化」を様々な視点から確立してきました。本学会に関わる多くの皆様のお力添えにあらためて感謝申し上げます。本学会は、競技種目を問わず、様々な種目におけるコーチングを扱っている学会です。他の競技種目から学び、会員相互で研究課題を共有できる学会であります。今後とも本学会への積極的なご参画や投稿を期待しております。

 

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青木 和浩(あおき かずひろ)博士(スポーツ健康科学)

 

順天堂大学スポーツ健康科学部 教授・学部長補佐、日本陸上競技学会 会長、順天堂大学陸上競技部 部長・監督